月曜日, 3月 05, 2018

Tankというクラスロール

タンク(tank)とは、ヒットポイント(HP)や、攻撃力、防御力、耐久力の高い戦士系・盾戦士を指す。パーティ(PT)で前衛に立ち後衛に攻撃が行かないようにする役割をする。MMORPGなどオンラインゲームの職業システムの一種で前衛職に当たる。
こういったクラスロールを確立したのは EverQuest (1999) が最初と言われたりする。古くはD&D辺りでそういった概念はあり、輸入されドラクエ等でも〝高防御で近接物理攻撃が強い戦士系〟〝防御は劣るが素早く器用なシーフ系〟〝まるで紙だけど後列から強力な攻撃魔法や支援等をするキャスター系〟といった設定はあったのだけど、マルチプレイで本格的にそれら分担を取り入れ定着させたのはEQらしい。
今では多くのMMOがこの概念を継ぎ当たり前になってたりするけど、タンクというロールは基本的に人気がない。「フルボッコにされてるだけ」「地味でつまらん」「そのくせ死ぬとパーティが壊滅的になって責任が重い」などなどの理由。ヒーラーなんかも同じ理由であまり人気がなかったりするのだけど。逆にもっとも多いロールはダメージディーラーやDPSerと呼ばれるアタッカー職。RPGやSTG等ジャンルの違いはあれど明確な役割分担があるゲームでは海内外どこでもこんな感じっぽい。

ところがMoEでは前衛職いわゆるタンクが多い。理由は多くの盾技や防御技があり、敵の攻撃にあわせて使い分けるという能動的なプレイが純粋に楽しいからだと思われる。そしてプレイヤースキルが向上すると低防御でも被ダメを抑えることができ、防御面に割くステータスを攻撃寄りにして後衛アタッカーに引けを取らない与ダメが出せるのも魅力であったり。私もこの自由度の高いシステムが好きでMoEを続けていた理由の半分くらいは前衛職が楽しいからだったりする。

しかしそこで問題も発生してくる。ボスの目前に立ちダメージを食らう前衛が多いほどヒーラーの負担も増える、もしくは回復が追いつかないまま能力を出し切れず地を舐める前衛もでてくる。身も蓋もない言い方をすれば下手な前衛は要らずボスを抑えることのできる一人だけで十分という状態になってしまう。その一人の席を巡りボスのタゲを取り合うといった現象も発生し、ベテランが高い火力で引き付けたり、時にはヘイト技で強引に取り合ったりで、そこでは対ボスとは別の争いも起きてしまう。
それらが起きなくても、攻撃を受ける前提で作られた前衛職はタゲのない状態では単純につまらないのも現実。
これらは軋轢も生み、前衛職にチャレンジする事を諦めたり、もう関わりたくないと辟易して去ったプレイヤーも何人か知ってたりする。でもこればかりは仕様の問題で誰が悪いとか解決のしようのない問題…、海外のMMORPGであるような近接戦闘のダメージディーラーが成り立つ環境でもあれば別の形も生まれたのだろうけど、そういった改善もなく今に至った結果こういった椅子取りゲーム状態になってしまった。
出されたケーキを行儀よく均等に分けましょうとプレイヤーに求めるのも難しい話で、実力勝負になってしまうのはオンラインゲームの正しい形でもあるから。

本来少ない事で成立していたクラスロールのバランスが操作性の楽しさから人気職となり、そして皮肉なことに多人数プレイのバランスが壊れてしまうって他のゲームではあまり見かけないちょっと面白い現象だな…と思うMoEワールドなのであった。